うつ病は、統合失調症と並ぶ2大精神科疾患の一つで、気分、思考、意欲の面における変調を主徴とする病気です。
うつ病では、強い不安感、緊張、焦燥感、苦悩など感情面の症状の他に、行動が抑制され、緩慢で、外出や人との接触を嫌うなどの行動面の症状、思考の進行にブレーキがかかるなどの思考面の症状などもみられ、自分に対して否定的、悲観的になり自殺願望が現れる場合もあります。
症状が軽い場合は、何事も面白くない程度ですが進行すると、だんだん表情も暗く憂鬱になり、口数が少なく声も低く小さくなってきます。さらに進行すると、全く無表情の状態になります。
症状は1日のうちでも変動がみられ、一般に朝顕著に現れ、夕方から夜にかけては軽いことが多いようです。症状の現れ方には個人差があり、すべての人にすべての症状が現れるわけではありません。うつ病の診断基準として、以下の項目があります。
1. 抑鬱気分
2. 興味や喜びの減退、喪失
3. 精神運動制止または焦燥
4. 易疲労または意欲低下・気力減退
5. 無価値観または罪責感
6. 思考力や集中力の減退
7. 自殺念慮や企図
8. 食欲減退や体重の異常
9. 睡眠障害(不眠または睡眠過多)
以上のうち、1・2のうちどちらかを含む5つ以上の症状が2週間以上同時に存在する場合は、うつ病が疑われます。
同じような症状のものに「抑鬱神経症」がありますが、抑鬱神経症がストレスなどが原因となって引き起こされるのに対して、うつ病では原因となる特別なきっかけはありません。抑鬱神経症では、日内変動はなく自責感もうつ病ほど強くないというのもうつ病との違いです。
また、うつと躁を繰り返す双極性障害(躁鬱病)という病気がありますが、この病気とうつ病では治療や薬の処方が違いますので、まずは専門医の診断を受けることです。
治療は薬物療法などがありますが、当院では薬が合わなかったり、様々な副作用のために薬を減らしたいと思っている方に鍼灸治療との併用をお薦めしています。薬を減らす場合は、必ずかりつけ医に相談して医師の指示に従ってください。
うつ病その他の精神疾患や不眠症は、仕事や生活環境、不慮の事件・事故等で受けたストレスと、それを受け止める本人の性格などが原因の一つと考えられています。
ストレスというのは、それに負けない抵抗力をつけるためにある程度は必要なものです。ストレスは日本語で言うと負荷ですが、私たちが常に受け続けている地球の重力も負荷の一つです。
重力のストレスを受けない宇宙で一定期間を過ごした後地球に戻ると、地球の重力に対する抵抗力を失って立っていることが出来なくなるといいます。また、筋力トレーニングでは、筋肉に負荷をかけて負荷に負けない筋肉を作り上げていきます。
このように適度なストレスは、私たちの健康を保つために必要なものですが、大きすぎるストレスはケガにつながります。筋力トレーニングでも、重すぎるバーベルやダンベルを使ったり無茶なトレーニングをすれば、筋断裂などの怪我をしてしまいます。
心も筋肉と同じで、大きすぎるストレスを受けるとケガをします。うつ病というのは、心のケガのようなものです。
ケガをしたら、みなさん安静にしますよね。ケガをしているのに頑張ってしまうと、ケガは悪化します。うつ病にかかりやすい人は、まじめな性格の人が多いので、つい頑張ってしまいます。ケガをしたらまず安静にして、そしてあせらずゆっくりと治療していってください。
うつ病は根気よく治療を続けてゆけば、必ず良い方向にむかいます。当院の患者さんの中にも、病院に通いながら鍼灸治療を続けて、薬の量が減らしていった方はいらっしゃいます。
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