過敏性腸症候群というのは、腸には腫瘍や潰瘍、ポリープといった器質的な異常がないのに、腹痛や、便秘、下痢などの機能的な異常が起こる病気の総称です。
過敏性腸症候群は、症状の現れ方から「下痢型」「便秘型」「交替型」の3つに分類されます。
「下痢型」
慢性的な下痢の状態で、軟便、水様便、粘液便が頻繁に出るため、不安で電車に乗れなくなる人もいます。
「便秘型」
慢性的な便秘の状態で、腸内の水分吸収が亢進してウサギの糞の様なコロコロとした便が出ます。
「交替型」
下痢と便秘を交互に繰り返して起こります。
その他に、どの型にも共通する症状として、胃や腸内にガスが異常に溜まることによる下腹部の不快感、腹鳴、膨満感、げっぷ、吐き気などの症状や、精神的な症状として、不安感、不眠、全身倦怠感、めまい、頭痛、自律神経失調症状などが現れることがあります。
原因は、大腸など腸管の機能異常、先天的な神経質、自律神経の不安定、仕事や社会生活における強いストレスなど様々な要因が重なって起こってくるとみられています。
治療は、器質的な異常はないので、食事療法や薬物療法などによって症状の改善、腸機能の安定を図る対症療法中心になります。自律神経や、精神を安定させることである程度の改善が期待されるという点では、鍼灸による治療も有効だといえます。
東洋医学で診る過敏性腸症候群
下痢型
東洋医学には「七情」といって、怒・喜・思・悲・憂・恐・驚の七つの感情に、それぞれの変化の影響を受けやすい臓器をあてはめています。例えば、肝は怒、心は喜の影響を受けやすく、思は脾に影響が及びます。
悩み事などを抱えて思い詰め過ぎていると、脾が傷ついてしまうことがあります。また、怒の影響を受けやすい肝は、ストレスなどによるイライラで傷つくと、互いにバランスを取り合う関係にある脾に影響を与え傷つけてしまうことがあります。そうして脾の機能が失調すると、消化吸収が出来なくなって下痢をしやすくなります。
この場合、腸の他に脾や肝を元気にするツボに鍼や灸を使って、それぞれの働きを取り戻すような施術を行います。
便秘型
便秘の大きな原因は、水分不足と腸の活動低下ですが、この場合の便秘は腸の活動低下によります。人の身体の生命活動は、気の流れによって行われています。呼吸、血流、消化吸収、排泄などは、すべて気がスムーズに流れることによって正常に行われます。
このスムーズな気の流れを管理するのは、肝の役目です。ストレスによって肝が傷つくとこれが出来なくなり、腸の活動が低下し便秘することがあります。
この場合は、肝の機能を取り戻すためのツボに鍼をし灸は使いません。肝の機能を正常に戻すことで、渋滞を起こし流れの悪くなっている気の流れを良くすることで、腸の活動も正常に行われるようにするための施術を行います。
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