EDとは、性交時に十分な勃起やその維持が出来ずに、満足な性交が行えない状態をいいます。EDの患者は、日本では1000万人以上いるといわれ、男性不妊の原因の約3割にもなっています。加齢に伴って、その割合は高くなってきますが、最近では20~30代の比較歴若い人達のED患者が増えてきています。
EDには、病気その他身体に何らかの問題があって起こる器質性EDと、そういった問題が何もないのに起こる機能性EDとがあります。
器質性EDには、血管、神経、内分泌系(ホルモン)などに原因があり、糖尿病、心不全、高血圧、動脈硬化症などの他薬物や喫煙などもEDの原因となる場合があります。
一方機能性EDは、ストレス、過緊張、不安、人間関係など心理的問題や、躁鬱病(双極性障害)などの精神科疾患が原因となって起こると考えられています。
また、器質性の原因に機能性の要素が重なって起きる場合もあります。
EDの治療には、通常勃起不全治療薬を用いることが多いようですが、他にカウンセリングや漢方薬その他の内服薬、ホルモン療法などいくつかの治療法があります。
東洋医学では、EDを陽痿といいます。そして、東洋医学でもEDを病気の原因や性質、随伴症状などからいくつかに分類しています。心や精神的な問題、加齢や先天的な虚弱体質、食生活その他の生活習慣などからだいたい4つくらいに分類します。
命門火衰
メイモンノ火とは、人の生命エネルギーの源で、いってみれば“命の炎”みたいなものでしょうか。命門というのは、その命門の火を宿すところで、腎にあるとされています。腎は、左右に1つずつで2つありますが、本来の腎は左側にあるものをいい、右側にあるのが命門ともいわれています。このように生命の根源を宿す腎は、生殖にも関わっており、この命門の火が衰えると男女ともに生殖機能に影響をきたし、男性ではEDなどの性機能障害を起こします。
命門の火は、加齢によって衰えていきます。また、若くても先天的な虚弱体質の人や、過度の性行為、自慰行為、慢性疾患(特に腎疾患)などでも消耗されます。
命門の火は生命エネルギーなので、衰えてくると髪の毛や歯が抜けたり、耳鳴り、難聴などの加齢症状や足腰が重だるくなったり、眩暈がしたりすることがあります。また、命の炎が弱まるので、体も冷えてきます。
心脾両虚
東洋医学では、心は神を宿すといわれ心理的なことや精神活動に関わっています。そのため、心理的、精神的に強いダメージを受けたりすると心が傷つきます。また、思いつめすぎたり精神的に追い込まれたりすると脾がダメージを受けるといわれています。
脾は飲食物の消化を主っており、飲食物から気や血といったエネルギーを生成しています。これを腎が生まれつき宿している精“先天の精”に対して“後天の精“といい、先天の精が、加齢に伴って消耗していくのを補っています。そして脾でつくられた血は、心に送られそれを心が全身に送ります。そのため心と脾が傷つくと、気血が不足して生殖器に栄養がいかずに生殖活動を行えなくなります。
心脾が損傷している人は精神的に、また気血というエネルギーが不足しているため体力的にも損耗しているため、普段から疲れやすく集中力もありません。食欲や性欲があまりなく、眠りが浅く不眠になることもあります。気力、体力ともに不足しているため、動悸や息切れがしがちです。
七情内傷
七情とは、人が持つ、怒、喜、思、憂、悲、恐、驚の七つの感情のことで、強すぎるとそれぞれに対応した五臓が傷つきます。生殖に最も大きく関わる臓器は腎ですが、腎は恐と驚が強すぎると傷つきます。腎が蔵する精と心が主る血は、お互いに補い合っており腎が傷つくと心にも影響します。心腎が傷つき、精血が不足すると生殖器が栄養されず陽痿となります。このタイプの人は、オドオドしたりビクビクしたりしがちで、周囲に対して警戒心や猜疑心が強すぎる傾向があり、性交時(特に初回)に精神的ショックを受けることで陽痿になりやすい。
一方、怒りが強すぎると肝が傷つきます。肝という臓器は、疏泄といって気血の流れがスムーズに行くように調節しています。やたらに怒り易かったり、イライラしてばかりいると肝が傷つき、気血が滞って流れが悪くなります。また、肝は血の貯蔵庫でもあるので、肝が傷つくと血が不足してきます。気血の流れが悪くなったり、不足したりすると陰茎にかかわる宗筋という筋肉を栄養できずに陽痿となります。
七情の内傷による陽痿の人は、普段は正常に勃起しますが緊張や不安などがあると症状が現れます。
湿熱
湿は湿気の湿ですが、体の水分代謝が悪いと体内に湿を溜めやすくなり、それが熱化すると湿熱となり冷えると湿寒となります。脾は湿を嫌う臓器です。湿によって脾の機能が低下すると脾の水液代謝能力が弱くなり、体内にさらに水分がたまりむくみを生じたりします。また、脾が傷つけば「心脾両虚」の状態にもなっていきます。そして湿には一か所に留まって動かない粘漲性と下に溜まりやすいという性質があります。そのため特に身体の下部の気血の流れが滞りやすくなります。
湿熱は、アルコールや甘い物を摂りすぎると生じやすく、症状が急激に発症することがあります。このタイプの人は、下半身が重だるかったり、残尿感を伴ったりすることがあります。
EDは、体力や体質など体の問題に加え、性格や心の問題が深く関わっている場合があるため、治療が難しい疾患の一つです。勃起促進剤などの薬物療法が効果的な場合もありますが、副作用などを考えると多用は控え、西洋医学と東洋医学の両方を上手く併用していくことが体のためにも良いでしょう。また、アルコールや甘い物を控えるなど食生活に気を付けたり、睡眠をしっかりとって規則正しい生活をおくるように習慣づけるなど生活習慣を改善することも効果的です。煙草もEDの原因となる場合があるので、出来れば禁煙することをお薦めします。
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