顔面神経麻痺の原因、といっても東洋医学のお話です。顔面神経麻痺は、中医学では”口顔歪斜”ともいって、鍼灸治療の適応症の中でもポピュラーな疾患の一つです。
東洋医学には、西洋医学にはない経絡というものが存在します。経絡は、全身を流れる気血の通り路で、鍼灸治療などで使われるツボは外界と連絡する窓口のようなものです。経絡を、気血がスムーズに流れている状態が健康な状態です。
顔面神経麻痺は、顔を通る経絡が侵襲されることによって起きます。経絡を侵襲するものは、身体の外側からの病邪の場合と、身体の内側で起きた気の流れの異常によって起きた病変の場合があります。身体の外側からの病邪には、風、寒、暑、湿、燥、熱がありますが、顔面神経麻痺の場合「風」が中心となって「寒」または「熱」を一緒に連れてくるケースがほとんどです。
例えば、扇風機や冷房の風が顔に当たった状態のまま眠ってしまったりすると、風寒の邪が経絡を侵襲して気の流れを詰まらせます。風邪の発熱や中耳炎などの後で身体に熱が残っていると、風熱の邪が経絡を侵襲して気の流れを詰まらせます。
身体の内側の異常というのは、ストレスなど精神的な要因で気が鬱積してくると、身体の中に風の邪が(身体の内側で発生する風なので内風といいます)発生します。風の邪というのは、風(かぜ)の性質を持った邪気ですから、風(かぜ)のように舞い上がる性質があります。人の身体で上の方といえば頭面部ですから、内風が発生すると頭や顔に病変が起きることが多いです。顔面神経麻痺では、内風によって身体の余分な水分などが顔の経絡に入り込んで、気の流れを詰まらせてしまいます。
どちらも気の流れが詰まり、顔の筋脈に栄養が送られなくなることで顔面神経麻痺になります。
顔を通る主な経絡には、手足の陽明経と手足の少陽経がありますので、鍼灸で治療する場合もこれらの経絡に沿って治療を進めていきます。
手陽明大腸経
足陽明胃経
手少陽三焦経
足少陽胆経
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